このお話は、あるお客様の体験談を元に、少し脚色を加えながらまとめたストーリーです。エピテーゼとの出会いを通じて変わっていく姿を描いています。同じように悩みを抱える方が、ほんの少しでも前向きな気持ちになれるようなきっかけになれば、と願っています。
あの朝のことは、忘れられません。
2月の寒い空気の中、愛犬のリードが絡まってしまい、それを解こうと手を伸ばした瞬間でした。愛犬が興奮して暴れだし、私は思いがけず噛まれてしまったのです。
その一瞬の出来事で、左薬指の第一関節から先を失ってしまいました。
痛みとショックの中で、それでも手を離すわけにはいきませんでした。「もし手を離したら、他の人に噛みついてしまうかもしれない」。そんな必死の思いが、私の手を動かなくしていました。
傷は手術と治療で癒えていきましたが、心の傷は簡単には消えませんでした。手を見るたびに、自分の中の何かが欠けてしまったような気がして、誰かに見られるのが怖くなりました。手袋で隠したり、指先のネットカバーでごまかしたり。できるだけ目立たないようにすることで、なんとか日常をやり過ごしていました。
そんな私の毎日を変えたのは、偶然つけたテレビの中の光景でした。
ある日、松岡修造さんが紹介していたのは、「エピテーゼ」という技術でした。画面に映る田村さんという女性が、失われた指や体の一部を、まるで魔法のように再現していました。それはただの技術ではなく、一人ひとりに寄り添い、その人の心まで癒そうとしている姿に見えたのです。
不思議な感覚でした。どこかで見たことがある気がして…そう、思い出しました。数年前、地元の文化祭で田村さんの作品を見かけたことを。あの時は「すごい技術だな」と思っただけで、自分には関係ないと思っていました。でも、今は違いました。「私にもできるのだろうか」という小さな希望が胸に生まれたのです。
でも、勇気が出ませんでした。「本当に必要だろうか」「見た目を気にするなんて、ただのわがままかもしれない」。そんな思いが、私の心を縛っていました。そんな私の背中を押してくれたのは主人でした。「自分を取り戻すためなら、遠慮なんていらないよ」という彼の言葉が、心の中に灯りをともしてくれました。
田村さんに連絡をして、相談を重ね、ついにエピテーゼが完成した日。
鏡に映る自分の手を見て、言葉にならない感動が込み上げてきました。まるで失ったはずの指がそこに戻ってきたようで、心までが満たされていくのを感じました。
「隠す」日々から解放された私は、手を隠す仕草を忘れ、自然と笑顔が増えていきました。何よりも、鏡を見るたびに「ああ、私の手だ」と思えるようになったのです。
今、一番に見せたいのは主人です。「ほら、こんなにきれいになったよ」と、驚く顔を想像すると少し楽しくなります。
この指先に、もう一度勇気をもらいました。エピテーゼと出会えたこと、田村さんと出会えたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
60代女性 H.T様 主婦 群馬県 左手薬指のお悩み
このお話は、あるお客様の体験談を元に、少し脚色を加えながらまとめたストーリーです。エピテーゼとの出会いを通じて変わっていく姿を描いています。同じように悩みを抱える方が、ほんの少しでも前向きな気持ちになれるようなきっかけになれば、と願っています。